三連S字カーブステッチ
3本の曲線に、創業60年の老舗ファクトリーとしてのこだわりを。
FAGASSENTのデニムを後ろから見ると、左のバックポケットに三本のS字ステッチが入っています。僕は、この三本の線を単なる装飾として入れているわけではありません。
一つには、自社工場の技術を見せたいという気持ちがあります。
直線を三本縫うだけなら、それほど特別な話ではありません。
でも、カーブになると話が変わる。
さらにS字になると、もっと難しくなります。
S字には大まかな目安がありますが、実際の縫製では毎回まったく同じ曲線になるわけではありません。
縫い始める場所と、縫い終わる場所は決まっている。
その二点をきちんと守りながら、その間を不自然にならない曲線でつないでいく。
それを一本ではなく、三本。
三本が近すぎても駄目だし、離れすぎても美しくない。
機械でただ線を引くのとは違って、そこには縫う人間の感覚が必要になります。
僕自身、このディテールについては、
「自社工場では、こんなことができるんだぞ」
というところを見せたいという気持ちがあります。
普通の量産デニムであれば、わざわざこういう手間のかかる縫製を入れる必要はないと思います。
でも、FAGASSENTはファクトリーを背景に持ったブランドです。
だったら、ロゴだけでブランドを見せるのではなく、**縫製そのものがブランドの証明になってもいい。**
僕はそう考えています。
そして、このS字ステッチを入れているのは左側だけです。
右側には同じものを入れていません。
左右をきれいに揃えるのではなく、あえてアンバランスにする。
僕は、左右非対称になることで静止しているデニムに少し動きが生まれると思っています。
整っていることだけが美しいわけではない。
少し歪んでいるからこそ、美しく見える。
それも、FAGASSENTが考える「Distorted Classics」の一つです。


